S&P500ってなに?

米国株の代表的な株式指標にS&P500があり、高いパフォーマンスから近年人気を集めています。今回はS&P500について解説します。

S&P500ってなに?

S&P500とは?

S&P500とは?

S&P500は、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLCが公表している米国の代表的な株価指数の1つです。ニューヨーク証券取引所やNASDAQなどに上場している企業から代表的な500銘柄を時価総額で加重平均し、指数化しています。

S&P500の組入銘柄は、様々な条件によってスクリーニングされ決定しています。スクリーニング条件には時価総額や流動性、浮動株の比率や業績などが含まれており、条件を満たす企業の中からセクターのバランスを加味して組み入れられているのです。

投資の神様とも呼ばれるウォーレン・バフェット氏も遺言書で、「私の死後は資産の9割をS&P500に、1割を米国の国債で運用しなさい」とバフェット氏の妻に残したことが有名ですが、そのくらい大きく成長してきた株価指標となっています。

過去の実績からも長期的な視点で見れば、ほとんど右肩上がりの成長を続けています。その成長力から、日本の個人投資家の間でもS&P500への注目度が高く、S&P500に投資するインデックスファンドに人気が集まっているのです。

S&P500の上位銘柄

S&P500の上位銘柄

右肩上がりの成長を続けてきたS&P500の上位銘柄は、下記のようになっています。

S&P500の上位銘柄

2022年1月3日時点

上位銘柄はGAFAMなど勢いのあるIT企業が中心となっており、最近ではテスラがMeta(旧フェイスブック)を上回り上位になっています。NASDAQの上位銘柄と非常に近いものがあり、S&P500の成長は主にNASDAQのIT、ハイテク株に牽引(けんいん)されてきたとも言えるでしょう。

NASDAQはもともと、新興企業向けの市場でした。しかし、IT関連銘柄が急成長し、世界を代表する銘柄に成長したことでS&P500においても上位を占めることになり、世界の株価指標であるMSCIコクサイにおいても上位銘柄に多く名前を連ねています。

ダウ平均との違い

ダウ平均との違い

ダウ平均の正式名称は「ダウ・ジョーンズ工業株価平均(Dow Jones Industrial Average)」です。その名の通り30銘柄の株式で構成されており、S&P500と同様にニューヨーク証券取引所(NYSEArca、NYSEAmex)やNASDAQに上場している銘柄から選出しています。

「工業株」となっていますが、現在はもっと幅広い業種によって構成され、アメリカの代表的な優良企業30社のパフォーマンスを測定する株価指標です。

S&P500は、構成する500銘柄から算出されていますが、ダウは30銘柄から算出されています。構成銘柄はS&P500の上位銘柄も含みながら、ウォルト・ディズニー、ボーイングなどの古参の企業も含んでいます。算出方法についてS&P500は時価総額が加重平均され、日本のTOPIXと同様に計算されていて、ダウは株価平均で算出され日経225と同様に算出されています。

S&P500は時価総額順によって組入比率が決まるため、現在勢いのあるIT企業が上位を占めます。一方、ダウ平均は株価の平均により算出されるため、1株当たりの価格が高い銘柄が組入比率上位を占めています。

上位10銘柄の合計が全体に占める割合は、S&P500が約3割です。これに対して、ダウ平均は上位10銘柄が全体の約半分以上を占めています。そのため、ダウは株価の高い銘柄(値がさ株)の値動きの影響を受けやすく、組入銘柄の数からもS&P500の方がアメリカ経済の状態を反映しやすいとも言われています。

S&P500の特徴

S&P500の特徴

組入銘柄の多いS&P500は分散効果が高いため、ダウと比較して個別銘柄の影響を受けにくくなっています。一方、時価総額の大きな銘柄の影響を受けやすい点には注意が必要です。既に述べた通り、現在では上位銘柄がナスダックの上位銘柄と共通しているものも少なくありません。NASDAQの値動きに大きく影響されやすいと言えますが、NYSEの銘柄も組み入れられているため、アメリカ経済全体を反映しやすいでしょう。

S&P500は株価の動向を示すという役割の他に、経済の将来動向を示す指標としても用いられています。「VIX指数(恐怖指数)」や「景気先行指標総合指数(LFI)」の1つとして採用されているのです。長期的に見ると右肩上がりに推移しており、アメリカ経済が右肩上がりに成長してきたことが分かるでしょう。また、銘柄入れ替えを年4回四半期ごとに検討されており、厳しい採用条件が設けられています。

S&P500に投資することのメリット

S&P500に投資することのメリット

S&P500に投資することのメリットとして、500社の米国株に分散投資できることが挙げられます。S&P500は500銘柄の時価総額の加重平均であるため、500社の銘柄すべてに投資を行わなくてもS&P500に投資を行うことが可能です。

構成500銘柄すべてに投資しようとすると、まとまった資金と購入に膨大な手間が必要になります。しかし、S&P500への投資であれば、手軽に小額から投資でき、米国経済全体に対し投資することが可能です。また、ウォーレン・バフェットの遺言書にもある通り、過去に大きく成長してきたインデックスであり、手数料の割安なインデックスファンドも多くあります。そのため、手数料を加味したリターンにも期待が持てるでしょう。

S&P500に投資することのデメリット

S&P500に投資することのデメリット

S&P500は過去の実績からも大きく成長しており、世界の株価指標の成長を牽引してきたとも言えるでしょう。今後も上昇傾向にあると言われていますが、先のことは誰にも分かりません。何かの出来事をきっかけに予想に反して大きく値下がりしたり、かつての日本のように長期にわたるデフレに陥ったことで株価が低迷したりする可能性がないわけではありません。

また、アメリカ経済だけでなく世界経済の成長を取り入れられるとも言われていますが、基本的にアメリカ一国に集中投資することになります。国際分散投資という観点からは、世界全体に分散投資するべきであるというのが基本的な考え方です。そのため、S&P500だけでなく、世界全体に投資した方が良いと考える方が基本に忠実だと言えるでしょう。

S&P500か? MSCIコクサイか?

S&P500か? MSCIコクサイか?

ITやハイテク株に牽引されて、NYダウなどと比較しても過去に大きな成長を見せており、個人投資家の間でも人気の高い投資先となっています。しかし、仮にアメリカ経済が思うように成長しなかったり、何かがきっかけで株価が急落したりした場合であっても、国際分散投資を行って他の国にも分散投資することで下落を抑えられる効果があります。そのため、S&P500のみでアメリカに一国集中するよりも、MSCIコクサイのように世界全体に分散投資する方が望ましいというのが基本的な考え方です。

ですが、実際には先進国の株価指数であるMSCIコクサイの上位銘柄も、S&P500の上位銘柄と近いものがあります。S&P500の銘柄自体が、アメリカの株価指標でありながら世界全体の経済の成長をある程度取り込むことができているとも言われています。

また、その他の国に投資してわざわざ低成長の銘柄を組み入れ、パフォーマンスを落とす必要はないという考え方もあるようです。こうした意見は、専門家の間でも割れています。

基本に忠実に考えるのであれば、MSCIコクサイを選ぶべきと言えるでしょう。しかし、その構成銘柄やそれら銘柄がどのような戦略で利益を得ているかなどの情報も収集し、違いについて理解した上で選択を検討してみても良いかもしれません。

まとめ

まとめ

S&P500について詳しく解説しました。S&P500は右肩上がりの成長を続け、あのウォーレン・バフェットもS&P500に投資するよう遺言書で残したほど大きく成長してきています。S&P500のインデックスファンドの人気は高く、特に、近年ではつみたてNISAの普及で投資信託を用いた資産形成を始める人が増え、投資初心者の方が人気のランキングからS&P500のインデックスファンド一択で選んでいるケースも多く見られます。

S&P500は、これまで高いパフォーマンスを発揮してきた株価指標であり、これからも成長が期待されてはいますが、誰にも未来がどうなるかは分かりません。予想に反して大きく値下がりしてしまう可能性も当然ありますし、いつまでもこの成長が続く保証はありません。

投資初心者では、どの程度下落することがあるのかよく分からず、何となく人気の商品を選んだり、インターネットの情報からS&P500への投資を選択したりしているケースもあります。投資で大事なことは、変動する相場に対しどの程度自分が許容できるかです。

特に、下落した場合の含み損を見て慌てて売ってしまうなど間違った行動をとったり、運用している資金の目的によってはあまりリスクを許容できずに下落したタイミングで売却しなければならず、予期しない損失が発生したりするケースもあります。そのため、事前に自分が許容できるリスクの範囲を理解し、それに合ったポートフォリオを組んで投資を始めることが重要です。ご自身のライフプランや運用する資金の目的や性格から、リスクに対する許容度を事前に考えた上で投資判断に活用していきましょう。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。