先物取引とは?

先物取引という言葉は、耳にしたことがある方も多いでしょう。ここでは先物取引について、その特徴や種類、メリットやデメリットなど詳しく解説します。

先物取引とは?

先物取引とは?

先物取引とは?

先物取引とは、デリバティブ(金融派生商品)取引の一種です。
価格に変動がある商品(原資産)や有価証券などの資産を、取引の時点で決められた価格で、将来売買すること約束する取引です。現時点で売買の価格や数量などを約束しておき、将来の約束の日が来た時点で売買を行うのです。

例えば、お米が現在10kgあたり4,000円で売られているとしましょう。来年は冷害になり米不足で価格が上がるかもしれないと思った場合、1年後の決められた日に10kgあたり5,000円で買うことを農家さんと約束します。

「先物の買い」と「先物の売り」

これにより、翌年に本当に冷夏になって米が不作で価格が上がった場合でも、5,000円で購入できるというのが先物取引のメリットです。反対に予想に反して豊作になり、米の価格が下がった場合にも約束した5,000円で取引しなければなりません。

一方で、「先物の売り」で将来予想通りに価格が下がった場合、現在の価格で売ることができるため利益となります。

このように、事前に約束した価格で商品(コモディティ)などの取引を行ったり、株式や債券などの金融商品の取引を行ったりできるものを先物取引と言います。

例として米の価格を挙げましたが、ガソリンや灯油の精製・販売をしている会社が原油価格の高騰による仕入れコストの高騰を抑えるため、原油の先物買いをして価格の上昇を抑えるなど企業の財務戦略の1つとして用いる場合もます。株式投資などで差額の利益を狙うために用いられることも少なくありません。

先物取引の特徴、強み

先物取引の特徴、強み

先物取引は、反対売買による差金決済が可能です。先物取引は信用取引と同様に、証拠金を預け入れることでレバレッジ取引を行うことができます。証拠金の何倍もの取引を行うことができるため、少ない資金でも大きな取引が可能になるのです。その反面、損失も大きくなるため注意しましょう。

また、原資産を持っていなくても売ることができる「空売り」ができます。この「空売り」とは、原資産を持っていなくても将来売る約束をすることです。
「買い」の場合は、原資産価格が上昇していた際にその利益を得られますが、「空売り」では原資産価格が下落していた場合、その差額によって利益を得ることができます。また、先物取引は将来の決められた日に決済することが必要です。

先物取引の種類

先物取引の種類

先物取引の種類についてご説明します。

商品先物

農産物や鉱工業材料などの商品を、将来の一定日時に一定の価格で売買することを現時点で約束する取引です。商品とは金や銀、プラチナなどの貴金属、原油や天然ガスなどのエネルギー、小麦やトウモロコシなどの農産物、牛肉などの畜産物のことで、コモディティ(Commodity)とも呼ばれます。

例えば、将来原油の価格上昇を懸念している場合、その日時においていくらで取引するかを決定します。これによって将来原油の価格が上がった場合、あらかじめ決められた金額で取引できるため高い価格で買わずに済みます。
反対に価格が下落した場合には、上乗せした価格で購入することになり損失になるのです。先物取引にあたっては現物を購入・売却せずとも、先物価格と取引時点での価格の差額が利益もしくは損失になります。

商品先物は、それぞれの商品単体と、金や銀、農産物、鉱工業材料などの商品全体の先物市場に投資することができる投資信託などもあります。
物価上昇時などに価格が上りやすく、資産のインフレ対策にも用いられます。

金融先物

金融先物取引は価格が変動する各種金融商品や金利などについて、一定の期日に一定の価格での取引を約束することです。金融先物の種類には国債先物取引や金利先物取引、株価指数先物取引、外国為替先物取引、個別株先物取引などがあります。

先物の決済日には現物を現金で決済するものと、現物との価格差で差金決済があり、それぞれ「デリバラブル(国債先物など)」「ノンデリバラブル(金利先物、指数先物など)と呼ばれています。これらは証券取引所や金融先物取引所に上場され、一定の期日に株価が下落していた際のリスクヘッジのために「空売り」を行ったり、原資産価格との差額を狙った目的に取引されたりしているのです。

日経平均株価やTOPIXなどの株価指数を対象とした先物や投資信託やETFなどがあり、私たちも手軽に購入することが可能です。また、ブル型・ベア型といった先物取引を活用した投資信託もあります。

先物取引のメリット・デメリット

先物取引のメリット・デメリット

メリット

先物取引のメリットは、信用取引などと同様に証拠金を差し入れることで買いと売りがどちらからでも取引できる点が挙げられます。

通常は商品や株式などの現物資産を購入し、値上がりしたタイミングで売却することで利益を得ることができます。しかし、先物取引を活用することで現物を購入せずともレバレッジを効かせて、証拠金の何倍もの取引で利益を得ることが可能です。
反対に、現物を購入せず空売りを行うことで、相場の下落局面でも利益を得ることもできます。レバレッジを効かせることができるため資金効率が良く、短期間で利益を生み出しやすいと言えるでしょう。

また、米の例で前述したように、日本では江戸時代から米の取引に際に事前に決められた価格で取引することを約束していました。ヨーロッパではオランダがチューリップの球根での取引に使われたりするなど、金融商品が生まれる以前から先物取引の仕組みは存在していました。このように、購入する価格の高騰に備えたリスクヘッジの目的でも活用することができ、先物取引の本来の使い方とも言える取引です。

デメリット

デメリットとして挙げられるのは、使い方によってはハイリスクなものになってしまうことです。レバレッジを効かせた取引を行うことができ、証拠金以上の損失になることがあります。また、一定の水準を超えた損失が発生した場合には、証拠金の追加を求められることがあるでしょう。特に、空売りを行った場合、原資産の価格は青天井に上昇することもあります。その際は、空売りしたことによる損失が底なしになってしまうこともあります。

下落局面でも利益を得られるのは空売りの良い点と言えるでしょう。しかし、初心者においては安易に大きなレバレッジを掛けたり、大きな金額で空売りしたりするのは、大きな損失が発生する可能性もあるため、避けた方が良いと言えるでしょう。

オプション取引について

オプション取引について

先物取引と似た仕組みで、オプション取引というものもあります。オプションには「権利」という意味があり、オプション取引とは将来の一定の期日で決められた価格で取引をする「権利」を売買する取引です。買う権利のことを「コールオプション」、売る権利のことを「プットオプション」と呼びます。

オプションの買い手は権利を得るための費用として、売り手にプレミアム(手数料)と呼ばれるオプション料を支払います。そして、売り手はプレミアムを受け取る代わりに、権利行使に応じることになるのです。

先物取引は「原資産」の売買を約束することとですが、オプション取引は原資産を買う・売る「権利」を売買する取引であり、全く別の金融商品となります。つまり、先物取引は価格を買う約束をしていますので、期日には不利な条件であっても買う、もしくは売らなくてはいけません。しかし、オプションは権利を行使せず、買わない・売らないという選択肢を選ぶことできます。

一方で、オプションの売り手は権利行使に応じなくてはいけません。コールオプションの売りなどの場合には、原資産価格が青天井に上昇を続けると損失もその分だけ底なしに拡大していくことになります。
また、先物取引は証拠金を差し入れるのに対し、オプションはオプション料を払うことになります。このように、オプション取引と先物取引は似ていますが、異なる仕組みもありますので違いを理解しておくと良いでしょう。

オプション取引の起源は、古代ギリシャにまでさかのぼると言われます。哲学者・ターレスが天文学の知識から翌年にオリーブが豊作になると見込んでオリーブを絞る機械を借りる権利を買い、翌年にターレスの予想通りにオリーブが豊作になったのです。
オリーブを絞る機械の賃料が上ったことでターレスは事前に予約していた賃料で借り、高い賃料で他者に貸すことで利益を得たというエピソードがあります。歴史上では、先物取引よりも前からあった取引のようです。

まとめ

まとめ

先物取引とはどういうものなのか、どのようなメリット・デメリットがあるのかを解説しました。先物取引と聞くと「取引が難しそう」「金融の専門用語なんて自分には関係ない」などと思われるかもしれません。

しかし、先物取引は、価格が変動しているものを将来決められた価格で買えるよう予約しているもので、基本的な考え方自体は、さほど難しくはありません。証拠金を差し入れて手元資金の何倍もの金額の取引ができることは、信用取引やFX、CFD取引のレバレッジにも共通しています。

一方で、初心者の方にとっては活用することが少なく、大きな取引を行うには注意が必要です。先物取引を活用してレバレッジを効かせた取引ができる投資信託、相場の下落局面でも利益を狙える投資信託などもあります。
そのため、投資に慣れてきた頃には、これら商品の購入を検討する機会があるかもしれません。あらかじめ、先物取引について仕組みを覚えておくと良いでしょう。また、仕組みを知っておけば、意に反してハイリスクな商品を選んでしまうことも防げるはずです。

例えば、空売りを利用して、株価の下落をヘッジできる保険のような使い方もできます。目的や状況によって活用してみるのも良いでしょう。また、大企業が仕入れ価格を抑えるためのリスクヘッジの手段として、為替の先物や商品先物を活用されているケースもあります。
資産形成目的であっても、コモディティ先物市場に連動した投資信託などを活用して老後の資金など将来の資産形成を行う際に、インフレ対策としても使うことも可能です。初心者が資産形成を目的として活用することもできるため、先物取引については十分に理解しておきましょう。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。