金利と株価の関係が知りたい!

正確な投資判断をする上で、理解しておくべき金利について詳しく解説します。

金利と株価の関係が知りたい!

金利とは

金利とは

金利とは利息を計算するためのレート(利率)のことです。金利は「%」で表示され、一般的には「年利=1年あたりの利率」を意味します。例えば、100万円を金利1%の定期預金に1年間預けた場合、その利息は1万円となります。

長期金利と短期金利

金利には、期間によって長期金利と短期金利があります。金利動向によってマーケットは大きく動くため、投資を行う際に金利はとても重要です。経済ニュースなどで報じられる長期金利は「10年物国債の利回り」を示すのが一般的になり、長期金利とは期間が1年以上ある債券の金利のことを示します。

期間が1年未満の債券の金利は「短期金利」と呼びます。利回りは債券を発行した時点の利率(「表面利率」と言います)とは一致せず、絶えず変動します。なぜなら、債券価格は満期を迎えるとあらかじめ決められた価格で戻りますが、債券価格は満期までは絶えず変動するからです。

債券には金利が上昇すると債券価格が下がり、金利が低下すると債券価格が上がるという特徴があります。なぜ、金利が上昇すると債券価格が下がり、金利が低下すると債券価格が上がるのでしょうか。

例えば、保有している債券の金利が1%だとして、現在の金利が2%だとしましょう。この場合、保有している債券よりもこれから発行される債券の方が金利は高いため、保有している債券を売却するためには債券価格を下げる必要があります。

また、保有している債券の金利が1%だとして、現在の金利が0.1%だとしましょう。このケースでは、保有している債券よりもこれから発行される債券の方が金利は低いため、保有している債券は高く売却できるので債券価格は上昇するのです。

債券は、満期まで保有すればあらかじめ決められた価格で戻ってきます。ただし、途中で売却する場合は、絶えず債券価格が変動しているので注意が必要です。債券価格を決める主な要因は金利になりますので、金利情勢についてはしっかり確認しておきましょう。

単利と複利

単利と複利

金利は主に単利と複利に分けられます。単利とは、最初に預け入れた元本に対して利息が計算される方法です。例えば年3%の金融商品に100万円預け入れた場合、3万円(=100万円円×3%)の利息が毎年支払われることになります。
したがって、1年後の元利合計は103万円で2年後の元利合計は106万円、3年後の元利合計は109万円です。単利の代表的な商品に、個人向け国債があります。

一方、複利とは一定期間ごとに支払われる利息を元本に加え、これを新しい元本として利息が計算される方法です。利息が再投資されるため、利子が利子を呼ぶ結果となります。

例えば、年利1%で1年複利の金融商品に100万円を投資した場合、1年後に1万円の利子が付くことになります。これを当初の元本に加えて101万円が新しい元本となり、2年目の利子が計算されるのです。したがって、2年目の利子は1万100円(=101万円×1%)となります。この1万100円を元本101万円に足して、1,020,100円を3年目の元本とみなすわけです。

単利と複利は、期間が長くなれば長くなるほど大きな差になります。単利と複利のお金の増え方についてまとめましたので、以下を参考にしてください。

単利と複利のお金の増え方について

固定金利と変動金利

固定金利と変動金利

金利には満期まで固定される固定金利と、金利水準に応じて変化する変動金利があります。

固定金利商品

固定金利商品は、預入時の利率が満期まで変わりません。高金利の商品を購入すればその金利が満期まで確保できるので、金利の高い局面はもちろん、金利が低下しつつある局面でも利用したい商品です。
しかし、満期後に金利の低い局面となる場合に備えて、ポートフォリオは考えておく必要はあるでしょう。固定金利商品の代表的な商品には、定期預金や生命保険などが挙げられます。

変動金利商品

変動金利商品は金利水準の変化に連動して、預入期間中でも適用利率が変動する商品です。金利の低い局面や、金利が上昇しつつある局面で利用したい商品になります。商品によって金利を見直す時期は異なり、代表的な商品として個人向け国債(変動10年)などが挙げられます。

金利と株の関係性

金利と株の関係性

株価も債券と同様に金利変動の影響を受けます。一般的に株価は金利と負の相関関係にあり、市場金利が上昇すると株価は下がり、市場金利が下落すると株価は上がります。これは、金利が上がると企業は銀行などから資金を調達する際のコストが高くなり、業績を圧迫する可能性があるからです。

ただし、好景気が続いた際の金利上昇では、企業業績向上への期待が上回り、金利とともに株価も上がるケースもあるので一概に言えません。金利の上昇局面では投資家の警戒心が高まり、関心がグロース株よりバリュー株に向く傾向があります。

グロース株は成長するため、設備投資などバリュー株に比べお金をかける傾向にあります。金利が上昇すると、バリュー株に対して下落する傾向にあるのです。一方、バリュー株は成熟した大企業が多く、安定的な経営が期待できるため、金利上昇の影響をグロース株に比べ受けにくいと言われています。

金利と債券の関係性

金利と債券の関係性

金利は債券価格に影響を与えます。債券は金利収益を目的とした金融商品であることから、市場金利に価格が左右されるのです。前述の通り、市場金利が上昇すると債券価格は下がり、市場金利が下落すると債券価格は上がります。金利変動に即して債券価格も変動し、仮に両者が全く関係なく変動するのであれば、裁定取引(さいていとりひき)が可能となるでしょう。

裁定取引とは、金利差や価格差に注目して、同一の性格を持つ2つの商品の間で、割安な投資対象を買い、割高な投資対象を売ることにより、リスクなしに収益を確定させる取引のこと。アービトラージとも言います。

例えば、10年の長期金利が低下して1%になったとし、クーポン2%の10年利付国債の利回りが2%、つまり価格が100円に放置されているとしましょう。

仮に、ある投資家が期間10年の市場金利をベースに1.5%で資金調達ができたとすれば、その資金でこの2%の利付国債を買えば10年にわたって0.5%の利ざやを抜くことができます。
逆に、期間10年の市場金利が3%に上昇していた場合、このクーポン2%の利付国債を空売りして資金調達し、市場金利の3%近くで運用できる商品に投資すれば十分な利ざやが取れるでしょう。

しかし、実際にはこのようなことが起こりえず、市場金利とほぼ連動して利回りや債券単価も変動します。市場金利に完全に連動せず、「ほぼ」連動するのは需給関係や信用リスクの変化によるところが大きいでしょう。

正常な需給関係と発行体の信用リスクに変化がなければ、金利上昇時には債券の利回りは上がり、金利低下時には債券の利回りは下がります。したがって、市場金利の上昇が見込まれる場合、利回りは上昇し債券価格が低下するため、債券投資や公社債ファンドへの投資は縮小すべきであると考えられます。逆に、市場金利の低下が見込まれる場合には、債券投資や公社債ファンドへの投資は積極的に行うべきでしょう。

市場金利が低下していく背景には、金融政策が深く関係しています。各国の中央銀行は景気後退時に政策金利を引き下げて、景気を刺激しようとします。

最近では、2020年3月に起きたコロナショックが記憶に新しいのではないでしょうか。各国一斉に政策金利を引き下げ、何とか景気を維持しようと試みました。結果として株価や為替はリーマンショックほどの深刻な影響は受けず、比較的短期間で大きく回復したので、政策金利を引き下げたのは一定の効果があったと言えるでしょう。

ただし、政策金利は一度引き下げると、上げるのが難しくなります。2022年2月現在、アメリカは金利を上げようとしていますが、金利を上昇させることによってマーケットは過剰に反応し大きく株価が下落しています。金利を下げると、このような副作用もあることはしっかり知っておきましょう。

まとめ

まとめ

金利について詳しくご説明しました。金利という言葉については、聞いたことがある方が多いでしょう。実際のところ、金利の細かい意味について理解していなかった方は、意外と少なくないはずです。

株式や債券などの金融商品を購入する際は、金利についてしっかり理解しておくことがとても重要になります。なぜなら金利動向によって、株価や債券価格は大きく影響されるからです。金利には様々な種類がありますが、それぞれの金利の違いについてしっかり理解するのが大切になります。ここでご説明した内容を参考に、金利について理解を深め、ご自身の投資などに役立ててみてください。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融を分かりやすく伝えることをモットーに活動中。