IPO株の買い方は?

IPOには利益が出やすいイメージをお持ちの方が多いかもしれません。本記事ではIPO株について、買い方や注意点をご説明します。

IPO株の買い方は?

IPO株とは

IPOは「Initial Public Offering」の略で、新規株式公開のことです。未上場企業が上場して、投資家に株式を取得させ買ってもらうことで、事業資金の調達が可能となる仕組みになります。一般的に、IPOは多くの経営者にとって憧れと言えるでしょう。

IPO投資のメリット

IPO投資のメリット

IPO投資について、主な5つのメリットを詳しく解説します。

短期間で利益が得やすい

IPOは、一般的に上場初日に利益を出す機会が訪れやすいです。なぜなら、初値が公募価格を大幅に上回る可能性があるからです。また、初値を付けた後は株価が下落する銘柄もあるので、早めに利益確定する投資家が多く見られます。

投資で利益を出すためには長期分散投資が基本です。しかし、IPOは短期で利益が得られる可能性があります。これは大きなメリットと言えるでしょう。ただし、上場初日に100%利益が出るわけではない点には注意が必要です。

業績の良い企業へ投資ができる

基本的に業績が良くないと上場できないため、新規に上場できる会社は業績が良い会社です。グロース市場なら赤字決算でもIPOできることもありますが、基本的に業績が良くなければ上場はできません。IPOを通して、業績の良い会社に投資できるのはメリットとなるでしょう。

購入手数料が無料

IPOの申し込みに手数料はかかりません。仲介手数料なども不要ですので、安心して取引で決まるでしょう。

株初心者も挑戦しやすい

IPOは100%利益が出るものではありませんが、利益が出やすい投資ではあります。また、1人で購入できる金額は基本的に少額です。そのため、仮に損失を出しても大きな損失額にはなりにくいでしょう。株初心者にとって投資しやすいのもIPOのメリットと言えそうです。

落選しても損失はない

IPOの抽選に手数料は必要ありません。もちろん、たくさん取引をしていたり、たくさんのお金を証券会社に入金していたりした方が、当選確率が高まる証券会社もあります。しかし、落選しても特に損失はなく、不利益を被ることもありません。

IPO投資の流れ

IPO投資の流れ

ここでは、IPOがどのような流れで行われるのかご説明します。

まず、IPOを目指す会社は、証券取引所から上場の承認を受けなければなりません。上場の承認を受けるためには、経営状態や株主数・ガバナンス・事業計画などの審査に通過することが必要です。

そして、上場承認を受けたら、次は仮条件を決定します。企業と主幹事で市場の類似企業株価などから想定価格を決定し、機関投資家に想定価格での購入についてヒアリングをするのが一般的です。

ヒアリングの結果で価格を調整し、仮条件を決定します。仮条件をもとに、「どれくらいの投資家がいくら買いたいのか」という需要を調べて公募価格を決定するのが一般的な流れです。

なお、公募価格とは上場の基準となる価格になります。どれくらいの投資家がいくら買いたいのかを調べることを「ブックビルディング」と言い、ブックビルディングの結果、もっとも申告の多い株価が公募価格となるのです。

そして、IPO株は投資家に販売されます。ただし、IPO株は証券会社によって割当数が決められており、希望者が多い場合抽選となります。

IPO株の買い方

IPO株の買い方

続いて、IPO株の購入方法についてご説明します。

1.証券会社で口座を開設する
まずは証券会社に口座を開設します。IPO株は証券会社ごとに配分が決まっているので、IPO株の割り当てがある証券会社での口座開設が必要です。IPOに備えて、あらかじめ複数の証券会社に口座を開設しておくと良いでしょう。

2.IPO株の情報収集
IPO株を購入する際は、しっかり情報収集する必要があります。以下に、IPO株を購入する際に確認しておくべき主な情報をまとめました。

・IPOスケジュールの確認
・申込期間
・抽選日
・購入できる証券会社
・上場日
・目論見書の確認
・業種
・公開株と売出し株の割合
・業績/財務業況
・事業計画

IPO株は利益が出やすいですが、損失が出る可能性もあります。そのため、これら情報を事前にしっかり収集しておきましょう。

3.IPO株に応募する
情報収集が終わったら、IPO株に応募しましょう。株の購入希望枚数と購入希望価格を申請します。このとき、以下の点がポイントです。

・申込期間中に申し込む
・仮条件の上限で申し込む
・預かり資金の有無の確認

当たり前のように思えるかもしれませんが、意外と見落とす人がいますので注意しましょう。基本的には、仮条件の上限価格で申し込むのがおすすめです。

4.当選した場合購入する
抽選結果は「①当選」「②落選」「③補欠当選」の3つで、補欠当選は繰り上げ当選の可能性があります。購入意思を表明していない、あるいは「辞退」を選んだ場合は当選が無効となるので注意してください。

5.IPO株の上場後売買を行う
IPO株の購入ができたら、上場された後にタイミングを見て売却し、利益を狙いましょう。上場直後に売却する場合が多いですが、上場後も保有し続けることは可能です。期待できる銘柄であれば、価格の上昇を待って売るのも良いでしょう。

IPO株に当選するコツ

IPO株に当選するコツ

IPO株に当選するためのコツを、3つ取り上げてご紹介します。

複数の証券会社で口座開設し応募する

IPO株の割り当ては証券会社によって異なりますが、一般的には複数の証券会社に割り当てがあります。つまり、複数の証券会社で応募すれば、それだけ当選する確率が高くなるのです。IPO株に当選するためには、複数の証券会社に口座を開設しておきましょう。

主幹事を務める証券会社から応募する

IPOの主幹事を務める証券会社には、多くのIPO株が割り当てられています。そのため、主幹事を務める証券会社には必ず応募するようにしましょう。割り当てが多いので、それだけ当選する確率が高くなります。

完全平等抽選の証券会社で応募

IPOの抽選には、優遇抽選と完全平等抽選の2種類があります。優遇抽選は、過去の取引実績や預かり資産額が豊富なほど優先度が高くなります。一方、完全平等抽選は、1口座につき1単位のコンピュータによるランダム抽選です。取引実績預かり資産額が豊富な場合は、優遇抽選を選ぶべきと言えます。そうでない場合は、完全平等抽選を実施している証券会社から応募すると良いでしょう。

IPO投資で成功するコツ

IPO投資で成功するコツ

IPO投資は利益が出る可能性が高いとはいえ、100%利益が出るものではありません。少しでも成功する確率を上げるために、3つのコツをご紹介します。参考にしてください。

業績・財務状況の確認

IPO投資で利益を出すためには、やはり業績や財務状況が非常に重要になります。近年はIT・クラウド関連が人気業種ですが、人気業種のIPOだからと言って利益が出るとは限りません。競合他社へのサービス優位性などもチェックして、将来性があるかどうかしっかり確認しましょう。

公募株が売出し株より多いかを確認

公募株が売出し株より多いかどうかも重要です。

・公募株…新しく発行する株式
・売出し株…公募と合わせて既存株主が手持ちから売り出す株

公募株より売出し株が多い場合、既存株主が利益を出すためにIPOしていると判断されてしまう場合があります。また、初値が公募価格を割ってしまう可能性も高くなりますので注意しましょう

大株主を確認

スタートアップを支援する投資会社や投資ファンド(ベンチャーキャピタル)がいる場合、保有している株を上場時に売却し、株価が下落することがあるので注意が必要です。

一方、上場後の一定期間、既存株主が持ち株を売却できないよう制限をかけることもあります。この場合は、ある程度株価が安定する傾向にあるので、大株主についてもしっかり確認するようにしてください。

IPO株のデメリットと注意点

IPO株のデメリットと注意点

IPOにはデメリットもありますので、あらかじめ確認しておきましょう。ここで、主な3つのデメリットを解説します。

申し込みが多いため当選確率が低い

IPOは上場した瞬間に利益が出ることが多いので、申し込みも多くなります。しかし、IPOには限りがあるため、申込者全員にいきわたる可能性は一般的に低いでしょう。せっかく申し込んでも当選する確率は低いのです。

公募価格割れする可能性がある

IPOは初値が公募価格を上回ることが多いですが、あくまで「多い」だけであり、100%公募価格を上回るとは限りません。IPOに当選したとしても、必ず上場初日に利益が出るわけではないのです。

申し込み時点で購入が確定する前に購入額以上の資金が必要

証券会社にもよりますが、大抵の証券会社ではIPOに申し込んだ時点で、購入額以上の残高が口座に必要です。これは、落選しても必要になります。一時的ではありますが、資金が拘束されてしまうのもIPOのデメリットです。

まとめ

多くの投資家の憧れとも言える、IPOについてご説明しました。IPOは上場直後に売却すると利益が出る可能性が高く、多くの投資家から申し込みがあります。短期で利益を上げられる可能性があるのは、IPO株の大きなメリットでしょう。

ただし、IPOでも損をすることはあります。また、IPOで利益を出すためには、その確率を上げる方法も覚えておいてください。本記事の内容を参考に、ご興味のある方はIPO株への投資を検討してみてはいかがでしょうか。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融を分かりやすく伝えることをモットーに活動中。