投資信託で損しないためには?

近年人気が集まる投資信託で損をしないために、どのようなことを考えれば良いのか解説します。

投資信託で損しないためには?

投資信託で損する可能性はあるの?

資信託で損する可能性はあるの?

投資信託は1つの商品を購入するだけで、複数の銘柄の株式や債券、不動産などに投資できます。それ自体がある程度リスクが分散されている、比較的安定的に投資できる商品です。

個別の株式はその企業が倒産した場合、価値がゼロになってしまいます。また、株価が大きく下がってしまうこともあるでしょう。しかし、投資信託は複数の企業に分散投資されているため、個別株のように大きく下がることを抑えられます。

銘柄の選定や運用はプロが実施してくれるので、投資家は日本株、先進国株など大まかな投資先と商品がどのような運用を目指すのかを選ぶのみです。投資初心者でも、手軽にリスクを分散して投資することができます。昨今は個人年金保険や学資保険などが低金利で、長い期間お金を貯めてもほとんど増えないという状況です。また、iDeCoやNISAに人気が集まっていることもあり、近年では投資信託を利用した資産形成が注目されてきています。

投資信託は比較的安定的に投資を行い、将来の資産形成にも活用できる商品です。ただ、投資ですので、元本保証ではなく価格が上がったり下がったりすることがあります。また、投資信託の商品に思ったより資金が集まらないなどの理由で、投資信託の商品自体を廃止し、損失が発生した状態のまま強制的に償還される可能性もあるでしょう。そのため、各商品の特徴や損しないための考え方を知り、活用していくことが重要です。

投資信託で損をしてしまう原因

投資信託で損をしてしまう原因

投資信託で損をしてしまう理由は、主に知識不足と自分の目的に合わない商品を選んでしまっていることにあります。例えば、投資信託の商品のリスクや特性がわからないまま商品を選び、下がった時に怖くなって売ってしまうことがあるかもしれません。本来なら長期的に考えるべき運用を、短期的な価格の下落で判断して売却してしまうといったことが原因です。

投資信託は1~2年など短期間だと価格が上昇することも下落することもあり、短期的には損することがあるでしょう。しかし、投資の知識がないと相場が下落した時に「このまま下がり続けてしまうのではないか」と怖くなって、売却してしまうこともあります。これは、その商品が過去にどの程度のリスクだったのかを知らない、なぜ今下落しているのか理由がわからないと起きやすいものです。

例えば、2022年の米国のインフレ対策やロシアのウクライナ侵攻を受け、米国株や先進国株が大きく下落することとなりました。つみたてNISAなどで投資している人の中には、思わぬ下落で不安になってしまったという方も少なくないでしょう。また、将来の資金を準備するために投資信託を活用している場合、ご自身が許容できるリスクの範囲を超えた商品を選んでしまっていることがあります。過去に急速に成長してきた米国株が人気を集めていますが、米国株一択で投資をしているようなケースです。

お金が必要になる時期が決まっているケースでは、途中で安定的な配分に切り替えする戦略を考えて積立投資を実践していれば良いでしょう。しかし、人気ランキング上位の米国株を選んで、その後の戦略なく投資していると、いざお金が必要になった時期に価格が下がってしまっていることも考えられます。詳細な要因を見ていくと、下記のような場合もあるでしょう。

分散が不十分

投資信託は基本的に、すでに分散投資が実施されているものです。しかし、同業種や同じような値動きをする銘柄に分散投資されているような場合はリスクも大きく、大きく値下がりしたまま損失を抱えてしまうこともあります。このように、偏った業種に分散投資しても同じような値動きをするためリスク低減の効果が小さく、複数の業種に分散投資するよりも大きく値下がりしてしまうこともあるのです。

業種を絞ることで大きな利益を狙うこともできますが、反対に狙いが外れれば損失も大きくなりがちです。特定の業種に絞った商品を購入するのであれば、逆の値動きをしやすい業種の商品にも分散投資することで、ご自身でリスク分散を図るといったことも必要になります。自分で選んだり組み合わせたりすることが難しいなら、日経平均株価やS&P500などの株価指標に連動した、市場連動型のインデックスファンドや複数の業種に投資されている商品を選ぶ方が良いでしょう。

また、株式投資信託のみでなく債券投資信託や不動産を投資対象とした投資信託のREITを組み合わせたり、国内外の複数の資産にも分散投資したりすることでも、リスクの低減を図ることができます。それら複数の資産に1つの商品で分散投資できる「バランス型ファンド」もあり、安定型~積極型までご自身に合ったリスクの商品を選ぶことも可能です。

商品の知識がなく目的に合わないものを選んでしまう

投資信託の中にはブル型やベア型など、レバレッジを効かせて値動きの幅を増幅したハイリスク・ハイリターンな商品もあります。これらの商品の特性をよくわからないまま選んでしまうと、大きな損失が発生してしまうことにもなります。人気上位の商品の中にも、特定の業種に絞って投資されるような商品もあり、知らないまま選んでしまっているケースは少なくありません。

分配金を重視している

投資信託には得られた利益を投資家に還元する、「分配金」と呼ばれる株式の配当のようなものがあります。分配金は利益を還元するものですが、分配金は必ずしも利益が出た時だけに支払われるのではなく、利益が出ていない時にも支払われることがあります。利益が出た部分から支払う分配金を「普通分配金」と言いますが、利益が出ていなくても元本を取り崩し支払う分配金が「特別分配金」です。

投資信託によって、分配金が自動的に再投資される商品と、分配金を定期的に支払うタイプがあります。定期的に支払うタイプだと、利益が出て投資家に還元してくれてお得なように思われるかもしれません。しかし、長期で資産の成長を目指す場合には、分配金が再投資される方が複利効果を得られるために望ましいと言えるでしょう。また、特別分配金で元本を取り崩してしまうため、資産が減ってしまうこともあります。

手数料が高い

投資信託には購入する時に掛かる購入時手数料、保有している間毎日少しずつ資産から引かれる信託報酬、売却する際に掛かる信託財産留保額があります。これらの手数料は、自分の資産の中から引かれていきます。そのため、仮に運用実績がプラスだったとしても、手数料で引かれてしまったがために元本を下回ることもあるでしょう。投資信託を選ぶ際には手数料を必ずチェックし、高い場合商品はそれに見合った運用実績なのかを確認のうえで投資してください。

投資信託で損を回避するポイント

投資信託で損を回避するポイント

投資信託で損失を回避するには、どのような点に気をつければ良いでしょうか。

長期分散投資を心掛ける

まず重要なことは、長期分散投資を心掛けることです。投資信託は短期では利益が出ることもあれば、損失が出ることもあります。しかし、長期的に保有することで損失が発生する可能性が低くなり、利益が出る可能性が高くなるものです。

実際、日本の株価指標である日経平均株価もTOPIX、先進国の株価指数であるMSCIコクサイなど、世界各国の株価指標は過去20年・30年の1年あたりのリターンを平均するとプラスになっています。つまり、該当するインデックス型の投資信託を購入すれば長期的にはプラスになる確率の方が高かったことになり、長期で保有していれば損失は出ていなかったのです。

このように、長期的に運用し資産が増えていると、仮に大きく相場が下がった時でも資産が元本を上回っていることがあります。そして、長期保有が基本ですので、10年以上使う予定のないお金で投資することが重要と言えるでしょう。

分散投資を意識する

2つ目のポイントとして、分散投資を意識することです。個別の株式、特定の業種に絞った投資は高いリターンを得られる可能性がある反面、損失が発生した際の損失も大きなものになります。そのため、複数の会社に投資し、業種も1つでなく異なる値動きをする複数のものを組み合わせ、世界中の国に分散投資することでリスクを分散しながら大きなリターンを得ることが可能です。

また、株式のみでなく債券やREIT(不動産投資信託)にも分散し配分を調整することで株式投資信託のリスクを低減し、安定的に利益を狙っていくこともできます。

この2つのポイントは、将来受け取る公的年金の積立金の運用にも活用されています。GPIF(年金積立金運用管理独立行政法人)が運用を開始した2001年から21年で100兆円以上もの利益になり、リーマンショックの後でも元本を下回っていなかったという結果になったのです。

ドルコスト平均法で購入する

投資信託は毎月定額ずつ積立方式で購入でき、毎月一定額ずつ買い続け積立することもできます。毎月定額ずつ購入していると、高い時も安い時も機械的に購入し続け、価格が安い時にはたくさん買うことができ、高い時には少しし買わないという買い方が可能です。
それによって購入価格が平均化されため、価格が高い時にまとめて投資することがなくなり、仮に積立開始時よりも価格が下がっていても資産がプラスになっている可能性もあります。この買い方を「ドルコスト平均法」と言い、毎月一定額ずつ投資信託を購入することで積立できるので、将来の資産形成に向いている方法です。

そして、低コストの商品を選択することも重要です。特に長期で保有していると購入時のみに発生する販売手数料とは違い、保有している間ずっと掛かり続ける信託報酬も比較しましょう。

投資信託で大損をしてしまった際の対処法

投資信託で大損をしてしまった際の対処法

もしも投資信託で大損をしてしまったら、どのようにしたら良いでしょうか。長期分散投資の通りに運用し、一時的に下落しているだけならば、下がっている時に慌てて売るようなことなく様子を見ると良いでしょう。景気の回復や相場下落の要因が解消することで、価格が上昇する可能性が高いと言えます。

もし高い手数料の商品を選んでいたら、早めに売却し手数料が低い商品に買い替えるのも良いでしょう。そして、もしも損失が発生した場合は確定申告を行い、損失を繰り越して翌年の利益と相殺することができます。そのため、忘れずに確定申告しましょう。

まとめ

まとめ

ここまで、投資信託で損をしないための方法や考え方をお伝えしました。投資信託はリスクが分散されているとはいえ、投資である以上損失が発生する可能性は少なからずあります。しかし、長期分散投資の基本を守れば、損失が出る可能性を大きく減らすことが可能です。過去の実績を確認し、ご自分が決めた資産配分だとどの程度下落する可能性があるかを認識しておきましょう。

最近ではクレジットカードなどのポイントを利用し、0円でも投資を始めることができます。また、100円からでも投資信託を購入することが可能になりました。慣れないうちは少額で投資を始め、実際にどの程度の値動きになるのかを慣れてから、少しずつ金額を増やしてみても良いでしょう。

損をする可能性はありますが、しっかりと知識を身につけ、リスクを理解したうえで活用すれば、資産を増やしながらお金を守ることもできます。まずは、運用の考え方や商品選びの知識を学ぶことが大切です。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。