恐怖指数(VIX指数)とは? 特徴と投資するメリットデメリットをご紹介!

投資するタイミングを見たり、数値の値動きに対して投資したりできる恐怖指数(VIX指数)について解説します。

恐怖指数(VIX指数)とは? 特徴と投資するメリットデメリットをご紹介!

恐怖指数(VIX指数)とは

恐怖指数(VIX指数)とは

恐怖指数(VIX指数)とは株式市場に対する投資家の心理状態を数値で表したもののことです。「Volatility Index」(ボラティリティ・インデックス)の略で、恐怖指数とも呼ばれています。

ボラティリティとは?

ボラティリティとは何なのか。簡単に言うと、株価や通貨の値動きの変動率のことを指します。一般的に価格変動の度合いを示す言葉で、「ボラティリティが大きい=その商品の価格変動が大きい」「ボラティリティが小さい=その商品の価格変動が小さい」ことを意味します。
ボラティリティは上昇・下落の変動が大きいことを意味しますが、恐怖指数は投資家がこれから先に大きく相場が下落しそうと判断する、あるいは急激に相場が変動している際などに大きくなるものです。

恐怖指数(VIX)は、シカゴ・ボード・オプション取引所(CBOE)が米国株価指数S&P500を元に算出・発表しています。S&P500先物のオプション取引の数値を元に、市場が今後30日でどのような変動を見込んでいるのかを数値化したものです。

S&P500先物とは?

S&P500先物とは、アメリカの代表的な企業500社の株価指標の先物取引価格のことを言います。先物価格は今後の価格の予想が影響しますので、つまり恐怖指数は、S&P500の株価の今後のボラティリティの予想指数ということになります。株式市場の変動が激しい場合など投資家の不安が高まると上昇し、金融危機によって株式市場が暴落するなど投資家の不安が高まると大きく上昇することがあります。

なお、日経平均株価の恐怖指数を表す数値を、日経平均ボラティリティ・インデックス(VI)と言います。S&P500が急落したり相場の変動が激しかったりする際にVIXの数値が上がるのに対し、日経平均株価が大きく下落したり相場が急激に変動したりする際などに上昇するのがこの日経平均VIです。

恐怖指数(VIX指数)の特徴

恐怖指数(VIX指数)の特徴

0~100の数字(パーセンテージ)で表され、通常10~20%の間で上下しています。大きく数値が変わるのは投資家が市場に対し不安を持っている時です。30%を超えると警戒領域とも言われ、市場の値動きが不安定な状態となります。このように、VIX指数から株式市場の状況を読み取れるので、「相場の温度計」とも呼ばれています。

単に相場の上昇・下落のみでは、市場がどれだけ反応しているのか知るのは難しいでしょう。しかし、VIX指数を用いて計算することで、それを数値として読み取ることが可能です。VIX指数を計算する元になっているのは米国のS&P500ですので、VIX指数自体は米国の株式市場の温度感を示すものとなり、日本の株式市場の動きとは異なることもあります。

恐怖指数(VIX)が大きく上昇した過去事例

恐怖指数(VIX)が大きく上昇した過去事例

過去、恐怖指数(VIX)が大きく上昇した出来事をいくつかご紹介しましょう。

2008年の金融危機:サブプライムローン問題、リーマンショック

サブプライムローンの破綻による証券化商品の不良債権化が要因となり、リーマンブラザーズの破綻につながりました。その結果として発生した、歴史上最悪とも呼べる金融危機がリーマンショックです。アメリカ発の金融危機は日本にも大きな影響を及ぼし、NYダウやS&P500といったアメリカの株式市場はもちろん、日経平均株価やTOPIXといった日本の株式市場も大きく下落することになりました。その際のVIX指数は89.53%を記録し、過去最高となっています。

2011年の欧州ソブリン危機:ギリシャ、アイルランド、ポルトガル等の財政危機

ギリシャの政権交代をきっかけに、財政赤字のGDP比が実際の数値よりも低く発表されました。その問題の指摘を受けたことで、財政が脆弱(ぜいじゃく)であると見られていたポルトガルやイタリア、スペインなどにも飛び火し、欧州の財政危機の問題に発展しました。その結果、世界の株式相場にも影響し、2011年に恐怖指数(VIX)は46.88%を超えるまで上昇する結果となった出来事です。

2015年のチャイナショック:中国の経済成長減速をきっかけとする世界同時株安

中国は急速な成長を遂げ、2010年にGDPは日本を抜いてアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国になりました。そんな急速な成長を見せた中国でしたが、2012年以降は成長率が下がり始めます。そんな経済成長の鈍化の懸念やシャドーバンキングなどの問題も相まって、人民元の下落や金融市場の混乱が発生し、世界の株式市場にも影響を及ぼしました。その際には恐怖指数(VIX)は警戒領域である30%程度になり、大きく動く結果となりました。

2020年のコロナショック:新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大と行動規制による世界同時株安

2020年から流行した新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大と行動規制が要因となり、一時期世界の株式相場が大きく下落することになりました。その際の恐怖指数(VIX)は、80%を超え、リーマンショックに次ぐ3記録となっています。

このように、株式相場が大きく下落する局面で恐怖指数が大きく上昇することが分かるでしょう。株式相場の下落が特に大きい時ほど、数値が高くなっています。また、それ以前にも9.11世界同時多発テロ発生時や、アジア通貨危機等にも高い数値を記録しました。

恐怖指数(VIX)の活用方法

恐怖指数(VIX)の活用方法

それでは、実際に恐怖指数(VIX)を投資でどのように活用すれば良いのでしょうか。例えば、VIX指数は株式市場全体の温度感を示すものなので、この数値が急上昇している場合、株式市場は本来持っている価値より大きく暴落している可能性が高いと言えます。本来の価値より大きく下落しているのであれば、その後に元の価格の水準に戻ることが予想されますので、割安な価格で投資することができるということです。

VIX指数が急上昇した後に、S&P500やその他株価指数に連動する商品を購入すると、上昇が期待できるでしょう。リーマンショックで一時的に大きく落ち込んだ際に購入していれば、その後に経済が回復してきたタイミングでそれまで以上に値上がりすることもあります。また、個別企業の株式もその会社の本来のポテンシャルよりも株価が大きく下がっていることがあり、将来的に値上がり益を手に入れられる可能性もあるのです。

こういったタイミングを見つけるのに、恐怖指数(VIX)を活用することができます。ただし個別企業の株式を買う場合には、当然ながら財務諸表から経営状態を判断することが大切です。また、それ以前に業績が低迷していないか、市場の混乱が落ち着いた後に株価が元の水準に戻ることが予想できるかなど、十分に分析した上で投資することが必要となります。

恐怖指数(VIX指数)へ投資するメリット/デメリット

恐怖指数(VIX指数)へ投資するメリット/デメリット

VIX指数は株式市場の動きを読むだけでなく、その値動きに連動したETFに投資することが可能です。ETFとは「Exchange Treaded Fund」の略で、上場投資信託のことを言います。投資信託の種類の1つですが、証券取引所に上場され、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、NYダウ等の指数に連動するように運用されているものです。

通常、投資信託は1日の取引が終わり、その結果が投資信託の基準価格が決定されます。しかし、市場で取引が行われている間に相場は常に変動しています。投資信託では常に変動する相場の値動きに対して投資することはできませんが、ETFはリアルタイムに相場に対して投資することが可能です。VIXのETFはVIXに対して連動するようにデリバティブを活用したETFで、VIXの値動きに対しリアルタイムに投資することができます。

メリット

VIXのETFに投資するメリットは、株価が急落するタイミングで利益を上げられることです。今後S&P500が急落するような局面があれば、それに対して上昇するVIXのETFに投資することでリスクヘッジが可能になります。日経平均株価や日本の株式市場が下落する局面でもVIXが上昇する場面も多く、S&P500だけでなく日経平均株価やTOPIXなどの日本株のリスクヘッジに活用できる場合もあります。

また、相場が大きく下落して相場の変動性が高まると予想される局面であれば、VIX連動ETFを買うことで実際に相場が急落し、VIX指数が上昇したタイミングでETFを売れば値上がり益が出まるでしょう。ただし、予想に反して相場の下げ幅が小さい、あるいは変動が小さい場合は損失が発生する可能性もある点に注意してください。

VIX指数は先物取引も可能ですので、過去にVIX指数の数値が急上昇したようなタイミングで先物売りを行えば、VIXの下落幅で利益を得ることが可能です。先物売りは現在の価格で売ることを約束し、期日時点での価格で買い戻すことでその差額で利益を得られます。そのため、VIX指数が急上昇している際には、それ以降に元の水準に戻ることが予想されますので、その差額で利益を得ることができるのです。

ただし、上記のような相場になることは、過去の例でご紹介したように数年に一度起きるかどうかの稀なことです。また、そのタイミングを数値からしっかり判断しなければ、VIX指数の数値が上昇した際に損失につながることもあります。そのため慎重に判断することがポイントとなります。

デメリット

デメリット

VIX指数は平時には時間が経過すると価値が減少し続けるため、長期投資に向いていません。また、S&P500の価格の変動が思ったよりも小さい場合には、VIXの数値も高くならず損失になる可能性もあります。

同じVIXの先物であっても、残存期間が長いもの(期先物と呼ばれます)より短い物(期近物)の方が値段は安くなることがあるでしょう。性質を利用して利益を狙うこともできますが、特に初心者のうちは思いもよらぬ大きな損失を出してしまうこともあるため注意してください。小額での取引にとどめるか、S&P500のリスクヘッジ目的に利用するのが良いでしょう。

なお、日経平均株価の恐怖指数である日経平均VIに投資できるETFもあります。日経平均株価の下落局面で利益を得たい、あるいは日経平均株価の下落のリスクヘッジを行うなどの際には、日経平均VIを用いると良いでしょう。

まとめ

恐怖指数(VIX)について詳しく解説しました。アメリカのS&P500の急落に対し数値が上昇するものになりますが、NYダウやナスダックの下落時にも関係が深く、日本の株式市場においても過去に大きな相場の下落があった際にはVIX指数の急上昇が見られました。このことから分かるように、アメリカ以外の株式相場にも大きく影響している数値です。

株式相場や個別銘柄が投資家の不安によって本来の価値よりも下落しているなど割安なタイミングを狙ったり、VIX指数に連動するETFを購入することでリスクヘッジのために活用したり、あるいは利益を得るために活用することもできます。VIX指数がどのようなものか、どのような時に大きく数値が上昇するのかを理解しておけば、投資のタイミングを狙う1つの指標となるでしょう。VIX指数の変動自体で利益を得ることもでき、様々な使い方ができるようになります。投資戦略のために、ぜひこういった数値の意味も理解して活用してください。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。