景気敏感株/ディフェンシブ銘柄とは?

株式のうち、非常にポピュラーな景気敏感株とディフェンシブ銘柄についてご説明します。

景気敏感株/ディフェンシブ銘柄とは?

景気敏感株とは

景気敏感株とは

景気敏感株とは、景気動向によって株価が変動しやすい株のことを言います。景気が良くなってモノが売れるようになると、株価が上がるという構造です。市場全体が大きく変動する際に、同じ値動きになりやすい点が特徴になります。

景気敏感株は短期間で大きな値動きがあることが多いので、キャピタルゲインを狙うのに向いている銘柄です。ただし、短期間で大きな値動きがあるということは、当然ですが大きく下落することもあります。景気敏感株で短期売買を行う際は、十分に注意するようにしましょう。

ディフェンシブ銘柄

ディフェンシブ銘柄

ディフェンシブ銘柄は景気の変動の影響を受けにくく、業績が安定している銘柄のことを言います。短期的な株価の値動きは小さい傾向にあるので、短期的なキャピタルゲインを狙うのには向いていません。ディフェンシブ銘柄は、インカムゲインを狙う長期投資に向いている銘柄とされています。ディフェンシブ銘柄の中には配当が高い銘柄も多く、安定した配当収益を期待できるでしょう。

代表的な景気敏感株

代表的な景気敏感株

代表的な景気敏感株には、自動車などのメーカーや鉄鋼、化学、紙パルプ業界などが該当します。ここでは日本とアメリカの代表的な景気敏感株をご紹介しますので、実際に投資する際の参考にしてみてください。

日本の代表的な景気敏感株

まずは、日本の代表的な景気敏感株について、企業概要や業績と合わせて見ていきましょう。
※業績予想は発行会社が直近の決算短信で、公表しているものとなります。将来の株価等を保証するものではありません。
※配当金は発行会社予想を表示しています。

【大和工業(5444):鉄鋼】
電炉大手でH形鋼が主力で、韓国とタイ、国内の3本柱。持分に米国や中東合弁。

[業績]
22/3期通期の連結業績見通しについて売上高を1,440 億円→1,500億円(前期比10%増)、営業利益を85億円→125億円(同25%増)、経常利益を430億円→550億円(同2.6倍)と従来計画を上方修正しました。その理由に、タイや持分法適用関連会社の業績が想定を上回っていることを挙げています。
タイでは中国における輸出抑制策等により、東南アジア市場における競争環境が緩和傾向にあります。また、米国鋼材市況が堅調な非住宅建設需要に牽引され、鋼材需給が引き締まっていることを背景に、米国の持分法適用関連会社の業績が従来計画を上回る見込みです。

【本田技研工業(7267):輸送用機器】
4輪世界7位で北米が収益源、2輪は世界首位。環境対応を強化しており、40年までに脱エンジンが目標。

[業績]
22/3期の連結業績予想を下方修正。売上高にあたる売上収益15兆4,500億円→14兆6,000億円(前期比10.9%増)、営業利益7,800億円→6,600億円(同横ばい)、経常利益1兆円→8,600億円(同5.9%減)、純利益6,700億円→5,550億円(同15.6%減)。

【住友化学(4005):化学】
総合化学大手。石油化学はシンガポールやサウジアラビアでも合弁展開。医薬品、農薬、電子材料等が稼ぎ頭。

[業績]
22/3期の連結業績予想を上方修正。売上高にあたる売上収益2兆6,100億円→2兆7,100億円(前期比18.5%増)、営業利益1,800億円→2,250億円(同64.1%増)、純利益1,000億円→1,400億円(同3倍)。売上収益およびコア営業利益は、上半期における石油化学での製品市況上昇に伴う交易条件の改善や情報電子化学等での堅調な出荷により、前回発表予想を上回る見込みです。営業利益および純利益についても、コア営業利益の増加によって前回発表予想を上回る見込みとなっています。

【三菱マテリアル(5711):非鉄金属】
セメント、銅、加工、電子材料の4コア経営。伸銅品は国内首位。自動車、IT、リサイクルに注力。

[業績]
22/3期の連結業績予想を修正。売上高1兆7,600億円(前期比18.5%増、前回予想値と同じ)、営業利益470億円→420億円(同58.1%増)、経常利益560億円→590億円(同32.5%増)、純利益370億円(同51.6%増、前回予想値と同じ)。22/3期通期の連結業績予想は当第2四半期連結累計期間で増益となったものの、パラジウム価格下落の影響などがある一方、鉱山からの受取配当金の増加などにより営業利益は前回予想に比べて減少し、経常利益は前回予想から増加する見込みです。
政策保有株式の縮減および事業構造改革を進めることから、純利益は前回予想並みと見込んでいます。22/3期通期の個別業績予想についても、連結業績と同様の理由により営業利益は前回予想に比べて減少するものの、純利益は前回予想に比べて増加する見込みです。

【日本製鉄(5401):鉄鋼】
粗鋼生産量で国内首位、世界3位。技術に定評があり高級鋼板で圧倒的。12年に住金と合併し発足。

[業績]
22/3期の連結業績予想を上方修正。売上高にあたる売上収益6兆5,000億円→6兆7,000億円(前期比38.7%増)、純利益3,700億円→5,200億円(前期は324.32億円の赤字)。前回公表した連結・個別業績予想に対して、鋼材価格の改善やグループ会社の損益好転等により、22/3期通期の連結事業利益は8,000億円、個別経常利益は4,500億円となる見通しです。

アメリカの代表的な景気敏感株

続いて、アメリカの代表的な景気敏感株をご紹介します。

・JPモルガン&チェイス(JPM):金融
米国の大手金融持株会社。米国23州で銀行業務を展開しています。また、米国内だけでなく日本を含む、米国外の約60カ国において金融事業を展開している世界的な金融機関です。

・フォード・モーター(F):一般消費財
米国大手の自動車メーカーで、「フォード」と「リンカーン」を世界的に展開しています。自動車の販売・製造だけでなく融資や車両リース、自動車保険仲介サービスなど多角的な経営を行っている会社です。

・コノコフィリップス(COP):エネルギー
米国の独立系エネルギー企業で、石油と天然ガスの探鉱・生産が主事業。世界各国で石油やビチューメン、天然ガス、液化天然ガス(LNG)、天然ガス液(NGL)の探鉱・生産・販売などを行っています。

・ダウ・ケミカル(DOW):原材料・素材
基礎化学品の米国大手メーカーで、グローバルに事業を展開しています。製品は自動車、化粧品、医薬品、建設など、広範な業界に約6,000種類の製品を提供している会社です。

・キャタピラー(CAT):工業
建設機械や大型エンジンの米国大手メーカー。建設産業部門・資源産業部門・電気システム部門が主な事業の会社です。

代表的なディフェンシブ銘柄

代表的なディフェンシブ銘柄

代表的なディフェンシブ銘柄には、生活必需品である食品や医薬品、社会インフラである電力・ガス、鉄道、通信などが該当します。ここで、日本とアメリカの代表的なディフェンシブ銘柄をご紹介しましょう。

日本の代表的なディフェンシブ銘柄

まずは日本の代表的なディフェンシブ銘柄について、企業概要や業績と共に見ていきましょう。

※業績予想は発行会社が直近の決算短信で、公表しているものとなります。将来の株価等を保証するものではありません。
※配当金は発行会社予想を表示しています

【NTT(9432):情報通信業】
NTTグループ持株会社。ドコモ主力で固定電話は独占、光回線も高シェア。海外開拓・提携に注力。

[業績]
「1Qの業績は想定より好調だった」としながら、22/3期通期の業績予想を据え置きました。営業利益は前期比3.5%増の1兆7,300億円の予想であり、全事業で増益を見込んでいます。1株当たり年間配当金も5円増配の110円で、11期連続の増配見込みです。また、1Q決算発表にあわせて自己株式取得計画も公表。株数で1億株(自己株式を除く発行済株式総数の2.76%)、または取得総額で2,500億円のいずれかが上限です。

【JR東日本(9020):陸運業】
鉄道最大手で首都圏・東日本が地盤。不動産賃貸や駅ナカ物販事業が成長し、「Suica」を育成。

[業績]
22/3期の連結業績予想を下方修正。売上高2兆3,260億円→2兆570億円(前期比16.6%増)、営業損益740億円の黒字→1,150億円の赤字(前期は5,203.58億円の赤字)、経常損益250億円の黒字→1,600億円の赤字(前期は5,797億円の赤字)、最終損益360億円の黒字→1,600億円の赤字(前期は5,779億円の赤字)。
第2四半期累計期間は新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、2021年4月から9月にかけて東京都をはじめとした各地で断続的に緊急事態宣言が発令された影響などにより、顧客の利用が低調に推移しました。売上高、営業利益、経常利益、純利益(連結では純利益)は、いずれも前回予想値を大幅に下回っています。通期の業績予想については、当第2四半期累計期間の業績などを勘案して下方修正しました。

【武田業品工業(4502):医薬品】
国内製薬首位。がん、中枢神経、消化器、希少疾患等に重点を置き、巨額買収で世界売上は上位10強入り。

[業績]
22/3期の連結業業績予想を下方修正。売上高にあたる売上収益3兆3,700億円(前期比5.4%増、前回予想値と同じ)、営業利益4,880億円(同4.2%減、前回予想値と同じ)、経常利益3,520億円(同3.99%減、前回予想値と同じ)、純利益2,500億円→1,843億円(同26.3%減)。
通期の業績予想については、2021年7月30日に公表した予想から修正しました。純利益は前回公表予想から657億円減益の1,843億円に修正。EPSは、前回公表予想から42円56銭減少の117円35銭に修正しました。

【JT(2914):食料品】
たばこが事業の中核。M&Aで海外たばこ事業を拡大中。食品・医薬品も展開し、飲料事業は撤退。

[業績]
21年7月に公表した21/12 期通期の連結業績予想を増額修正。売上収益を前期比9%増の2兆 2,800億円(従来予想は2兆2,000億円)、営業利益を同1.9%増の4,780億円(同4,020億円)、調整後営業利益を同20.8%増の5,880億円(同5,170億円)としました。3Q累計で海外たばこ事業が伸長したことや為替(ドル·円)が円安方向で推移したことなどを受け、売上高および各利益を増額。加えて、足元の事業環境を反映し、1株当たり期末配当金予想を75円(従来予想は65円)に引き上げました。なお、今期の1株当たり年間配当金は前期比14円減の140円となる計画です。

【ニチレイ(2871) 食料品】
冷蔵倉庫と冷凍食品(ブランド別)で首位。低温物流は海外も積極的。水産・畜産も手がける。

[業績]
21年8月に公表した22/3期通期の連結業績予想を修正。売上高を6,000億円(前期は5,728億円、従来予想通り)、営業利益を前期並みの330億円(従来予想は350億円)としました。
低温物流の堅調が続く一方、加工食品で原材料価格の上昇が響くほか、タイの工場の稼働が低下した影響で減益となりました。なお、21年11月より家庭用商品や業務用商品の一部で価格改定を実施。原材料価格の高騰の影響を一部吸収し、通期で前期並みの営業利益を目指すとしています。

アメリカの代表的なディフェンシブ銘柄

続いて、アメリカの代表的なディフェンシブ銘柄をご紹介します。

・アップル:IT・通信
スマートフォン、タブレット、パソコンメーカー。日本ではiPhoneやiPadなどの移動通信機器でおなじみ。2021年秋にiPhoneX13を発売し注目を集めました。

・マイクロソフト:IT・通信
米国のソフトウエア大手です。多様なコンピューター向けにソフトウエアの開発、製造、ライセンス供与、サポートを展開。ウィンドウズ、サーバー、パソコン、OS、クライアントやサーバー環境向けアプリケーション、業務自動化・効率化アプリケーション、ソフトウエア開発ツールに加え、家庭用ビデオゲーム機器やタブレットも提供しています。

・アマゾン・ドット・コム:サービス
オンライン小売世界最大⼿企業で、クラウドサービスでは業界リーダーの地位を確立。特に利益率の高い「Amazon Web Services(クラウド)」と小売の「Amazonプライム(会員制サービス)」の業績への貢献度が高く、今後さらなる成長が期待されます。

・アルファベット:IT・通信
グーグルの持株会社。グーグルは独自の検索エンジンでインターネット検索の世界首位で、多数のスマートフォンで使われているAndroidもグーグルが提供しています。

・アリスタ・ネットワークス:IT・通信
米国のネットワーク機器メーカー。イーサネットスイッチやクラウドネットワークプラットフォーム、エクステンシブル・オペレーティング・システム(EOS)などを提供している会社です。

・ノースロップ・グラマン:工業
米国の軍需メーカー。軍用機、防衛電子機器、人工衛星などを開発・製造している会社です。

・ダラー・ゼネラル:サービス
米国のディスカウント小売チェーン。全米40州に約1万1,000店舗を展開しています。

・TモバイルUS:IT・通信
米国の移動通信サービス会社。後払い・前払い無線通話、データサービスおよび卸売無線サービスなどを顧客に提供している会社です。また、スマートフォンやノートPCやタブレット向けアクセサリーなども販売。ブランドには「T-Mobile」「MetroPCS」「GoSmart」などがあります。

まとめ

まとめ


景気敏感株とディフェンシブ銘柄についてご説明しました。銘柄の分類方法は多くありますが、景気敏感株とディフェンシブ銘柄は代表的な銘柄の分け方です。投資に当たっては、景気敏感株とディフェンシブ銘柄それぞれの特徴をしっかり理解しておきましょう。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えることをモットーに活動中。